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東京高等裁判所 昭和25年(う)196号 判決 1950年6月14日

被告人

後藤ミネ

主文

省略

理由

論旨第二点について。

本件告発書によれば、税務当局は、判示第二(一)(二)に該る事実については、清酒醪を製造したものとして告発したことが記載されているが、収税官吏作成の犯則事件取調顛末書、同差押目録、技師天尾辰三作成の検定調書等によれば、右告発にかかる清酒醪とは、濁酒と認めるべきものに外ならないが、税務当局としては、本件が清酒密造を目的とする事件で、濁酒又は、醪を製造することを結局の目的としたものに非ずと認めたのであることがわかる。而して、原審証人逸見喜一の証言によれば清酒醪とは濁酒に外ならず、清酒製造の目的を以てする場合は、濁酒の状態も清酒醪と称するものであることが明らかである。又原審証人天尾辰三の証言によれば、醪の熟したものが濁酒であるとゆうのであるが、判示第二(一)(二)により、製造されたものが濁酒として成熟していたことは、右証人作成の前記検定調書の記載、並に被告人の原審公判廷に於ける供述によつて明白であり、判示第二(一)(二)の物件は、いずれも清酒製造過程に於ける供述、検察官の被告人に対する供述調書中の記載によつて疑を容れる余地のないところであるから、税務当局の告発に係る物件と、判示にかかる物件とは、同一物を指すものであり、偶々税務当局の該物件に適用すべき法条についての見解に於て、検察当局並に原判決と意見を異にしたわけである。而して、かかる該当法条に関する見解の相違の如きは、起訴の前提条件たる告発を無効ならしめるものでなく、従つて本件起訴の効力に何等影響を及ぼすべき筋合でなく、其の間原判決に事実誤認の存在する余地はないことになる。即ち論旨は理由がない。

(註、本件は量刑不当により破棄自判)

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